【新宝島】と聞いて何を思い浮かべるだろうか。
「新宝島...なんだっけ....」
そんな方は以下の動画を見て欲しい。
(見るまでもない方が多いだろう...)
思い出して頂けただろうか。
そう。
あの曲。
あのMV。
あのダンス。
数年前、SNSで大いにネタにされ拡散された。(未だによく見かける。)
その人気は海を越え、中国のとある劇団がダンスの音源にするほどであった。
しかも背景演出までもが♫新宝島に寄せてあるから驚きである。
これは間違いなく【新宝島】が海外に認められた、と言っても過言ではないだろう。
国を跨いで人々を虜にする【新宝島】。
なぜ当楽曲はこれほどまでに愛されるのだろうか?
本記事ではその理由を独自に探っていく。
そもそも【新宝島】とは...
【新宝島】は2015年9月にリリースされた ロックバンドグループサカナクションの楽曲である。映画 "バクマン。"の主題歌として制作された。楽曲名は手塚治虫の作品『新宝島』より借用されている。(Wikipedia参照)
では、さっそく人々を虜にした理由を探っていこう。
お手元に音楽プレイヤーがある方は 是非 当楽曲を聴きながらこの記事を読んで頂きたい。
曲の全体構成から分析
全体構成は以下のようになっている。
イントローAメローサビーAメローサビー間奏ーサビ
全体構成に関しては 格段特異な面は見られない。
歌詞から分析
まずは歌詞をご覧いただきたい。
次と その次と その次と線を引き続けた
http://j-lyric.net/
次の 目的地を描くんだ 宝島
このまま君を連れて行くと
丁寧に丁寧描くと
揺れたり震えたりした線で
丁寧に描くと決めていたよ
次も その次も その次も
まだ目的地じゃない
夢の景色を探すんだ 宝島
このまま君を連れて行くと
丁寧に歌うと
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌うと決めてたけど
このまま君を連れて行くよ
丁寧に描くよ
揺れたり震えたりしたって丁寧に歌うよ
それでも君を連れて行くよ
揺れたり震えたりした線で
描くよ 君の歌を
ご覧いただいたとおり「次」と「丁寧」を何度も何度も連呼する。また「丁寧」に関して、実際には 1丁寧 あたり ×3回歌うことも忘れてはならない。(歌詞上では、実際より少なく表記されている。)
どうやら、数多く登場するこれらの言葉こそが【新宝島】を鑑賞するにあたり重要な意味を持っているようだ。
ではもう少し詳しく紐解いていこう。
「次」という言葉は、まだ見ぬ何かに対する期待感や不安感を表している。この場合の まだ見ぬ何か とはきっと宝島や宝物のことだろう。
またAメロの冒頭にこの言葉を持ってくることで、我々は知らずのうちに【新宝島】の世界観に吸い込まれていく。
一方、「丁寧」は宝物を探すにあたって一歩一歩丁寧に足を踏み締めている情景がイメージできる。さらにボーカルの山口氏は「丁寧」を「てーねー」ではなく、口を大きく動かし「ていねい」というふうに「丁寧」を歌っている。MVやライブでも彼の姿勢が変わらないことに大いに好感が持てる。
すこし煩わしくなったが、要するに彼らは歌う際の丁寧さも大切にしていると言うことだ。
また歌詞の最後に注目してほしい。
♪描くよ君の歌を♪
丁寧に歌ってきた理由がこのワンフレーズで明らかになる。
「描く」と聞いて我々は無意識に『絵』を想像する。
しかし楽曲の終わる直前になって描いていたのは実は「絵」ではなく「歌」だったことがようやく分かる。
最後の最後に聴き手の予想や期待感を程よく裏切るのもこれまたイイ。
メロディ・細部の構成から分析
曲のイントロはシンセサイザーの長い電子音から始まる。
シンセの音を耳にすると近未来感を感じずにはいられない。
この音色で【新宝島】の『新』の部分を表現しているかのようだ。
一方同時にその裏でドラムの音が少しずつテンポをあげ、聴き手の高揚感を徐々に煽っていく。
まさに宝島に上陸するイメージだ。
メロディラインはシンセの電子音やピアノの音色がメインを占めており、ギターとベースの主張は極めて控えめ。
そう、ロックバンド感が一切見当たらないのである。
もう一度確認するが、この曲はロックバンドグループ:サカナクションが作ったものだ。
思わず呟いてしまう。
「こやつら、ギターとか持ってるのにロックバンドじゃない。。」
この裏切られ方は、ポッピングシャワーアイスクリームに初めて出会ったときの幼い頃の記憶を彷彿とさせる。
「ただのアイスかと思っていたら
口の中がパチパチしてダンスフロアみたい!!!!」
まさにそんな印象だ。
イントロがそろそろ終わりかと思ったら ここで突然の転調。
Aメロが始まる。
♪ 次と その次と その次と線を引き続けた
夢の目的地を 目的地を描くんだ宝島 oh ♪
ここでもう二段階ギアが上がっていく。
一段ではない。二段なのだ。
「え、なに?もうサビ?」ーそう、もうサビである。
♪ このまま君を連れて行くと〜 ♪
・・・
あっという間に連れて行かれた。
たったワンフレーズのAメロを終え サビに入る。
この短さが引き金となり、聴き手を退屈させることなく楽曲の一番美味しい部分を味わってもらえるのだ。
それだけではない。
スムーズすぎるほどサビに入ることで、聴き手に一切の不快感を感じさせずに
サカナクションのモットーの一つである「違和感」の両立を実現している。
このあともう一度Aメロとサビを繰り返し、曲調が落ち着く。
間奏である。ここでもピアノの音をメロディラインにしているようだ。
しかし後ろの方からじわじわと何かが聴こえてくる。なんだこの音は...
ギターだ!ギターソロだ。
ここで初めて気づかされる。
「あ!!彼らはやっぱりロックバンドグループだったんだ...!!」
岩寺氏によるギターの音色は言うまでもなく ザ・バンドグループ といった感じであり、今までの雰囲気とは一変、素晴らしくカッコ良い。
ギターソロを通じて彼らの表情、声色、音色も何か力強いものを纏う。
最後のサビは全てを絞り出すかのように、それこそ「丁寧に」歌っている。
しかも『ロックバンドグループ』サカナクションとして。
楽曲の最後にベールを脱ぎ、彼らの全てを表現する。この、いわゆる「ギャップ」が聴き手を虜にするのだろう。
総合分析
Sakanaction Life では毎日21時にサカナクションの一曲をお届けします。
1日の最後にあなたの中でサカナクションの音楽を奏でるきっかけになればうれしいです。
まとめ
一音一音に迫るように【新宝島】の魅力ついて述べてきたが、いかがだっただろうか。
【新宝島】はこれまでのロックミュージックの常識を打ち破った新しい音楽の形なのである。
ココがポイント
- 曲の大部分がロックバンドを連想させない
- Aメロの異常なまでの短さでスムーズにサビ
→不快感ゼロ(イイトコ取り)
→違和感の創出 - ギターソロ以降のベールを脱ぐ感じ
- 丁寧に歌われる「ていねい」の4文字から想像される情景
→彼らの音楽への向き合い方を具現化