またこの曲か...そう思ったあなたは決して間違っていない。
しかしあと5秒踏みとどまって欲しい。
今日はそんなあなたにとりあえず聴いて欲しいサカナクションの名曲をお届けする。
とりあえず。とりあえず、下の動画をクリック。後悔はさせない。(断言)
いかがだっただろうか?
不思議な余韻や感覚を覚えただろう。
なぜこの楽曲は我々に独特の余韻を植え付けるのだろうか。
様々な角度から考察していく。
そもそも【アルクアラウンド】ってなに?
【アルクアラウンド】は『歩く』と『ルックアラウンド(探す)』を重ねた造語。その由来の通り、ボーカルの山口一郎氏が歌詞を探し回るかのような演出のMVは見ものである。
歌詞から分析
早速歌詞から分析していく。
僕は歩く つれづれな日 新しい夜
j-lyric.net
僕は待っていた
僕は歩く
ひとり見上げた月は悲しみです
僕は歩く
ひとり淋しい人になりにけり
僕は歩く
ひとり冷えた手の平を見たのです
僕は歩く
新しい夜を待っていた
覚えたてのこの道
夜の明かり しらしらと
何を探し回るのか
僕にもまだわからぬまま
嘆いて嘆いて
僕らは今うねりの中を歩き回る
疲れを忘れて
この地でこの地で
終わらせる意味を探し求め
また歩き始める
正しく僕を揺らす 正しい君のあの話
正しく君と揺れる 何かを確かめて
声を聞くと惹かれ
すぐに忘れ つらつらと
気まぐれな僕らは
離ればなれ つらつらと
覚えたてのこの道
夜の明かり しらしらと
何が不安で何が足りないのかが
解らぬまま
流れて流れて
僕らは今うねりの中を泳ぎ回る
疲れを忘れて
この地でこの地で
終わらせる意味を探し求め
また歩き始める
悩んで僕らは
また知らない場所を知るようになる
疲れを忘れて
この地でこの地で
今始まる意味を探し求め
また歩き始める
彼は常に歩き回り歌詞をルックアラウンド(探す)していた。
結局見つけることはできたのだろうか。
(結論、MVでは永遠に歩き続けるのだが... この点に関しても視聴者の予想をはるかに上回ってくる。)
上記の歌詞におけるポイントをまとめる。
僕は歩く
冒頭Aメロにこの言葉を持ってくることで、この楽曲の速度感を聴き手に直接的に示している。
つれづれな日 なりにけり つらつらと しらしらと
日本文学史を彷彿とさせる独特の言葉遣い。
これらの言葉の音は、現代を生きる私たちを何か本能的に引きつける力を持っている。
歩き回る 泳ぎ回る
これらについては、次の 〔曲の全体構成から分析〕で述べる。
曲の全体構成から分析
♫ アルクアラウンド の全体構成は以下のようになっている。
イントロ -- Aメロ -- Bメロ--サビ--
-- Aメロ ×1/2 -- Bメロ×4 -- サビ×2
曲の前半部分と後半部分で構成が大きく異なっている。
前半部分の [イントロ--Aメロ--Bメロ--サビ--] で
この楽曲はこのタイミングでボルテージが上がるのか!!
と思い込ませる。
しかし後半部分 [--Aメロ ×1/2 --] で、
あれ、Aメロが短いぞ。。(まあ気のせいか..)
一つ目の違和感である。
そんな聴き手を置いてけぼりにして Bメロ [-- Bメロ×4 --] に入っていく。
あれれ、やっぱりBメロの方が長くない??
ここでようやく違和感に気付く。
しかし時、既に遅し。
そんな視聴者には目もくれず、サビに向かって山口一郎氏は歩き(歌い)続ける。
♪ 流れて〜流れて〜 ♪
え、もう嘆かないの!?
1番まで嘆いていた彼はもう嘆いていないし、歩いてもいない。
流れに乗って泳ぎ回っているのだ。
我々を連れて。
わずか3分前には共に陸地にいたはずなのに、なんということだろう。
彼らの奏でる音の大海原に彼と一緒に飛び込んでいるではないか。
ふと気がつくと、大地から水中に我々は場所を移している。
陸から海へ。
この視点の切り替えに注目して楽曲を味わって欲しい。
メロディ・細部の構成から分析
「どぅん...どぅん...」で始まるイントロ。
先の見えないトンネルに入っていく印象である。
直後の歌詞 ’’僕は歩く徒然な日新しい夜僕は待っていた’’ をワンクッション挟み、すかさずシンセのメロディラインに切り替わる。
暗闇の中に一気に光が差し、心地よいスピード感で歩き始める印象だ。
シンセをメロディラインとしたダンスミュージック感。<Aメロ・Bメロ>
チラ見せするロックバンド感。<サビ・間奏>
ロックバンドの面影を残しつつ、ロック特有の騒がしさが限界まで削ぎ落とされているのもこの楽曲の魅力であろう。
総合分析
まとめ
サカナクションの知られざる名曲 アルクアラウンド について 丁寧に紐解いてきた。当楽曲の魅力について改めて以下にまとめた。
ココがポイント
・イントロ「どぅん...」の暗い雰囲気
→光に向かって歩き出す印象
・日本文学を彷彿とさせる独特の表現技法
・聴き手に何気ない違和感を与える楽曲構成
→陸から海へ・ロックの面影を残しつつ、ダンスミュージック性と両立
ココも要チェック!!
収録CD